淡青手帳

 ついにペルーの日本大使公邸占拠事件が解決した。
事件発生から一二七日目のことで、ペルー特殊部隊の公邸武力突入という結末であった。
結果的に作戦は大成功で、犠牲者は最小限の人質一人、特殊部隊二人にとどまったといっていいだろう。
フジモリ大統領の信念と決断力には心からの称賛を送りたい

日本では人質の人命を優先して、テロの要求をある程度のむべきだという世論もあったが、
フジモリ大統領は終始一貫して「テロには絶対に屈しない」という姿勢を貫いた。
その意志と信念の勝利であるといえる

最近の日本では地位や名誉、あるいは自己の利益のために自分の意見をコロコロと変えてしまったり、
悪なる誘惑に負けてしまう政治家や企業家が目立つなかで、
今回のフジモリ大統領の態度は現在の日本に求められている真の指導者の姿を教えてくれたような気がする

日本では国民性として、協調や謙虚さが美徳とされ、幼い時から
“波風を立てない”“世間様に迷惑をかけない”という教育がされてくる。
そのため他人の眼をいつも気にして、自分の意見をはっきりと言えなくなってしまい、
かえって自分の意見を押し通すことは頑固、矯慢と見なされてしまうことが多い。
それが他の国の人から見れば、何を考えているのかわからない、腹黒い国民と見られてしまうのだ

数年前『NOと言えるニッポン』という本が売れたように、
日本の指導者も悪なる誘惑に屈せず、正義と信念を通すことのできる人物になって欲しいものである。
確固たる信念に基づいて行動する人物は、他人を感化し、活き活きと輝いて見える。
我々東大生がそのような指導者となり、新しい日本を築いていかなければと思わせられた。


1997 東大新報