がん遺伝子治療実施へ

国内初 本学医科研が来月から

 本学医科学研究所付属病院の遺伝子治療臨床研究審査会(黒木登志夫委員長)は9月29日、60歳の腎臓がんの男性患者に対し、がんの遺伝子治療を実施することを承認した。がんを対象にした遺伝子治療は国内初で、10月5日から治療が始められる。

 男性患者は右腎の細胞がんで、すでに肺に転移している。手術や放射能、抗がん剤などの治療法も効果がないことから、遺伝子治療を決意した。担当医と話し合い、実験的な治療であることも十分理解したうえで、「次世代に向けたがん治療研究の役に立てれば」と快諾したという。
 治療では、患者の腎がん細胞を取り出して培養。これに免疫力を高め、がん細胞を攻撃しやすくする「顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)」と呼ばれる物質を作る遺伝子を組み込み、患者の体内に戻す。遺伝子が体内で働けば、患者の免疫力を高め、手術で取りきれなかったがん細胞を攻撃して患者の延命が期待できる。
 治療の第1段階として10月5日にがん細胞を摘出。遺伝子を組み込んだ後に安全性を確認した上で、細胞採取後56日目に患者に注射で投与する。治療は最終的に5人を予定しており、結果を見ながら残り4人の患者にも実施していく。
 同研究所以外にも、岡山大で肺がん治療、千葉大で食道がん治療、癌研究会付属病院で乳がん治療がそれぞれ計画されている。


米で脳死肝移植手術

若林さんが無事帰国

 国内で生体肝移植を受けたが再移植が必要と診断され、米・マイアミ大で6月19日に脳死肝移植を受けた本学大学院生若林正さん(27)が9月26日午後、母親の由美子さん(51)とともに成田空港に到着した。
 若林さんは96年1月、肝硬変のため由美子さんから肝臓の一部を提供されて東大病院で移植手術を受けた。しばらくは順調だったものの、同年秋口から病状が悪化。今年に入ってからは「余命は1年未満」と診断されるまで病状が悪化し、脳死の臓器提供者からの再移植が必要になった。
 しかし渡航、移植手術には約4千万円に上る費用が必要なほか、現地での移植待機患者のリストに名前を連ねるには19万6千ドルの前金が必要になるため、今春から友人らが中心になって「若林正君を救う会」が結成され、募金活動が行われていた。資金が集まった4月に渡米、6月に臓器提供者(ドナー)が現れ、手術を受けた。経過は順調だという。
 帰国した若林さんは「米国では移植は特別視される医療ではなく、私を含め多くの人が元気になっている。日本も早く脳死移植を行える環境を整備してほしい」と話した。


第90回公開講座始まる

「ゲーム」を多角的に分析

 第90回東京大学公開講座が9月26日、本郷キャンパス大講堂(安田講堂)で始まった。毎年春と秋に開催されているもので、決まったテーマをもとに様々な分野から一般向けに講義が行われる。今回のテーマは「ゲーム」。
 公開講座の初日となった26日は、今回の企画委員長を務める宮島洋・経済学研究科長が開講の挨拶を行った後、経済学研究科の松井彰彦助教授と総合文化研究科の大勝孝司助教授が講義を行なった。
 宮島委員長はゲームの考え方が様々な分野に応用されていることを述べ、今回の企画を通してゲームの考え方を学んでほしいと開催の意義を語った。
 松井助教授は「恋は駆け引き ―身近なゲーム理論―」と題する講義を行い、ゲーム理論の歴史を紹介するとともに、身近な対象である恋愛・結婚をゲーム理論によって分析した。続いて大勝助教授は「マネーゲームとサッカー ―計算機の中の多人数ゲーム―」と題する講義を行い、ゲームの分類、ゲームの理論化、マネーゲームにおけるゲーム理論、サッカーにおけるゲーム理論などについて語った。
 今後は10月31日まで毎週土曜日(10月10日は休講)に計5回にわたって開催される。


平成11年度進学振分け

第1段階内定者を発表

 平成11年度進学振分けの第1段階内定者と第2段階の志望集計の発表が9月24日、本学駒場キャンパスで行なわれ、正門横の教務課掲示板に内定者の全氏名が掲示された。当日は掲示板の前に1日中ひとだかりができており、成績表の配布が行われた教務課前にも学生が長い列をなしていた。
 昨年に比べ大きな変動はないが、全体的に昨年よりも底点(進学最低点)が下がった学科が多い。その中で理学部生物学系3学科(動物学・植物学・人類学)や、教養学部基礎科学科の各学科は軒並み底点を上げている。文系では文学部西洋史が昨年より7点高い76.1点という"底"をつけた。毎年最も高い底点をつける理3以外からの医学部進学は、理1:94.7、理2:91.6点と相変わらず高く、文2・文3からの法学部進学も90点と高い"底"がついている。しかし、昨年86.9点という高い底点をつけた教養学部文化人類学は、今年は65.7点と落ち込み、毎年高い底点をつける理2からの理学部物理学科進学は、今年は72.9点と"底"を下げた。
 本学の進振り制度は2段階選抜から成っており、第1段階で進学者定員の7割が内定する。今回内定を受けた学生は、第4学期までに必要な単位をそろえれば内定した学部に進学できる。第1段階で内定先の決定しなかった学生は、第2段階の志望集計を見て28日までに志望変更を届け出る。第2段階の内定者発表は10月9日に行われる。 


キャンパス情報

東大生産技術研究所イブニングセミナー開催

「脈動する都市」
 都市の中の「動き」に着目し、全10回のオムニバス形式で「脈動する都市」を解析する。
▽場所 生産技術研究所第1会議室
▽時間 午後6時から7時30分
▽プログラム
10月16日「開かれた室内」加藤信介助教授
10月23日「動く建築」川口健一助教授
10月30日「都市の音環境」橘秀樹教授
11月13日「空から眺める都市の環境 ―街路から都市、そして地球環境まで―」安岡善文教授
11月27日「情報で都市を支える」柴崎亮介教授
12月4日「途上国・大都市における地震防災努力」須藤研教授
12月11日「都市のライフラインと地震防災システム」山崎文雄助教授
12月18日「都市の水循環」虫明功臣教授
1月8日「都市の動脈 ―道路交通」桑原雅夫助教授
1月22日「橋の老化を防ぐ」舘石和雄助教授


 ある大手予備校が今年の夏期講習を受けた高校生、浪人生に調査を行い、1980年の調査と比較した結果が公表された。調査は、ライフスタイルに関する項目について重要かどうかを聞いたものである「重要」という回答が多かったのは、「自分をコントロールできる」「自分の信念に従って生きる」「他人を認める」。いずれも80%以上だ。なんとなく響きの良い言葉が並んでいるが、彼らの本音を代弁すれば、要するに"自分なりに好きなように生きたい。他人からとやかく言われたくない。他人は他人。私は私。他人が何しようと関係ありません"ということではないか。これは実は駒場の雰囲気なのだが、そう簡単には変わらないだろう。小中高で妙な個人主義礼讃の教育が行われているからだ逆に、「社会貢献」「他人から認められる」などの項目はポイントが減っている。最近の官僚や財界人の汚職を見ていれば誰でもやる気を失う。本学卒で、汚職で更迭された人や罰を受けた人は、もう「東大卒」という肩書を外してほしい。責任ある立場を自覚すべきだ回答の中で、男女別で女子の「社会貢献」が7ポイント増えている。本学は最近女子がどんどん増えている。女子は真面目で成績もいいと教官の評判もいい。女子パワーに期待したい。