833号(2001年6月15日号)

Interview

  国連大学副学長
  鈴木 基之 教授

 国連機構の大学として、教育、研究の分野の中心とも位置付けされている国連大学は、国連組織の中で本部を唯一日本に置くものである。しかし、メールアンケートの結果が示すように、実際その活動内容は広くは知られていない。そこで副学長である鈴木基之先輩に、国連大学の設立経緯、活動内容を詳しく聞いた。

世界的問題の解決を

鈴木 基之 教授

――国連大学誕生までの経緯について教えてください。

 国連の大学構想は、1969年、当時のウ・タント国連事務総長が、「真に国際的な性格を有し、国連憲章が定める平和と進歩の諸目的に合致する国際連合の大学」の必要性を訴えたところから始まりました。しかし、その誕生までにはいろいろ問題があったようです。国連組織で教育機関を持つことで、途上国の優秀な人材が皆流れてしまうのではないかという懸念を欧米の大学が持ったこともありました。また資金面での問題もあり、ずいぶん懸念も多かったのです。最終的には、学部、学生は持たない、ということになったのですが、国際機関では学位を出すことができないことも重なり、一見不思議な大学となりました。
 それまで国内に国連機関の本部がなかったこともあって、日本政府は国連大学設立構想の発表に大変関心を持ちました。大学本部の東京誘致を呼びかけ、また大学基金への多額の拠出、首都圏に本部施設、研究・研修センター施設の提供を表明するなど、教育の面での世界貢献ということで非常に熱心に働きかけたのです。
 そういった日本の働きかけを受け、国連は国連大学本部の東京設置を決定しました。1975年9月、暫定的に、渋谷の東邦生命ビルの二フロアを本部施設として国連大学はスタートしました。現在の国連大学は、東京都の無償貸与によって提供された土地に、文部省が建物を建てたもので、1992年6月に完成しました。国連大学の設立に、日本政府と東京都は大きな貢献をしたと言え、これは国際的な高い評価を受けています。
 国連大学は学生もたないため、授業料による収入もありません。また、国連の通常予算の配分も受けていませんので、各国が拠出した大学基金によりその運営費の約半分がまかなわれています。残りの半分は、日本政府のODA予算によるものです。日本に本部を持つ国連の機関としても、国連大学は日本と国連組織の橋渡しをしていくことも重要だと考えています。

――国連大学の具体的な活動内容、特徴を教えてください。

 国連大学の目的は、世界の学者・研究者の知識を総合して「人類の存続、発展および福祉に関わる緊急かつ世界的な問題」に関して、創造的で前向きな解決策を生み出すための研究を行うことです。また、世界中の学者や研究者が参加する国連大学の世界的なネットワークに、途上国の学者や研究者を率先して参加させ、途上国の人材を育成することも重要な目的の一つです。このように、国連大学では研究≠ニ人材育成≠ニいう二つのものを中心に活動しています。
 国連大学は大学全体の研究、研修活動として、人間活動によってもたらされる影響、特に途上国にみられる影響の学術的考察を進めています。その学術活動は、この国連大学本部と世界各地の国連大学研究・研修センター、またプログラムなどを通してなされています。そういった世界的なネットワークを活かした活動をするようにしています。
 大学本部の学術活動は「平和とガバナンス」と「環境と持続可能な開発」という二つのプログラムに分かれ、またそれぞれの分野でプロジェクトを抱えています。「環境と持続可能な開発」の中には、先進諸国にターゲットを絞った、ゼロミッションフォーラムというものもあります。現在の大量の資源採集、大量生産、大量消費という流れの中で、資源の採集を最小限に抑えるなど、循環型社会の具体的な実現に向けて努力しています。リサイクルはもちろんのこと、それ以上に、生産消費のプロセスそのものの構造的な改革を考えることにより、資源を有効に利用し、廃棄物を減らしていく方向を示さなければなりません。そのためには、どの産業とどの産業を組み合わせ、資源生産性を上げることができるのかを明らかにすることが重要です。このフォーラムには日本の産業界をはじめ、国内の大学からも大勢の方が参加してくださっています。自治体の関心も高いものがあります。

 また研究・研修センターも多くあります。この建物の隣には高等研究所がありますし、ヘルシンキにはグローバルな経済政策の研究を行い、途上国民の生活条件改善を目的とする世界開発経済研究所があります。また、先端技術が途上国に対して与える影響についての総合的な研究を行う新技術研究所が、オランダのマーストリヒトにあります。ガーナのアクラには、アフリカの自然資源を管理するための研究を行うアフリカ自然資源研究所が、中国のマカオには国際ソフトウェア技術研究所があります。これは途上国の発展にも寄与するソフトウェアの開発を行うと同時に、途上国の国際レベルでのソフトウェア開発を支援するための機関です。
 これらの研究・研修センターの他に、特定領域を対象とする研究・研修プログラムが二つあります。カナダには、水と環境と保健に関する国際ネットワークがあり、水と環境と人間の健康の相互関係に関わる問題に関して途上国の人材育成に協力しています。ベネズエラにはバイオ技術の地域への普及を目的とする中南米バイオ技術プログラムがあります。この他にも様々の研究や研修、能力育成などを目的とするプログラムがあります。ヨルダンのアンマンで行われる、将来の世界の指導者となるべき若い人材を教育するリーダーシップアカデミーもその一つです。
 若い人材の能力育成のため、国連大学ではグローバルセミナー、国際講座なども開催しています。グローバルセミナーとは、日本の学生の国際問題意識を高めることを目的とした合宿形式のセミナーです。大学の専門課程以上の学生が主な対象で、周辺の外国人を含めた若い方に集まってもらい、環境などのテーマの下で話し合いが持たれます。それぞれの国の基本的なコンセプトの違いなどを理解してもらうことが狙いです。
 また2000年から実施されている短期研修講座、国際講座があります。将来、国連機関や国際的NGOを含めた各種の国際的機関の職員、あるいは外交官を目指す人たちを対象に、個々の国際問題に関する専門的知識を習得してもらうための講座です。分野ごとの世界的な専門家が講師を務めるユニークなコースです。これはあるテーマのもとで六週間にわたり、国連大学本部で実施されます。3分の2程度は途上国からの参加者です。NGOの機関、政府機関、あるいは大学の職員などが参加します。今年は「国連システム―組織と活動」、「環境の監視と質的状況」、「人権―概念と問題点」、「国際協力と開発」という4つのテーマのもとで行われています。このような場を通して、各国から集った若者が横のつながりをつくり、それが将来の国際的なネットワークへと発展してくれれば、と願っています。

 このように、国連大学はその本部を大学経営の中枢機関として、また世界の数都市に設置された各研究・研修センター、そしてプログラムなどの構成要素がネットワーク方式で相互に作用し合うという、他の大学にはない特徴を活かした活動を展開しています。
 しかし残念なことは、これらの活動が日本で行われているにも関わらず、国際講座等への日本の参加者が少ないということです。途上国からの参加者は、我々の予算で参加していただくのに対し、先進国からの参加者は自己負担で参加しなければならないといったこともその一因だろうと思います。  しかしそれ以上に問題なのは、日本国内で国連大学がよく知られていないということです。時には、入学試験の日程の質問を受けることもあり、関心をお持ち頂いたのに残念な思いをすることもあります。そういった意味で、国連大学の役割、存在、活動内容を広く知って頂くことにわれわれはもっと努力しなくてはなりません。
 そのための活動のひとつとして、現在、国連大学本部の一、二階をUNギャラリーとして一般の方々に公開しています。ここは日本にある国連機関の本部としては唯一のものであり、また建物のこの中には難民高等弁務官事務所、UNDP、広報センターなど七つの国連機関の東京事務所が入居しています。その意味でも、もっとここを有効に使い、他の国連機関の活動をも知ることができるような場にしていければと考えています。日本政府も、日本に本部を持つ国連大学を国連へのひとつの窓口として有効に使っていただければと考えています。

――「国際貢献」ということに関心を抱く人が、学生のうちにできることは何ですか?

 できるだけ若いうちから外国へ出てみること、そして世界中に同じ世代の友人を作ることが重要であると思います。そのつながりは将来必ず役に立つと思います。日本に留学で来ている人と友だちになるのもいいですし、あるいは自分から外国に出て行って友だちを作るというのでも構いません。ともかく国際的な友人関係を大事にしていくことが、将来の個人的な国際化に役立つのではないか、と思います。
 もうひとつは、今とは全く逆の話に聞こえるかも知れませんが、日本についてよりしっかりと知ることです。海外へ行けば、さまざまな話題のなかで、日本人としての考え方を暗黙のうちに聞かれていることが多いのです。そのとき、日本人であれば、日本ではどうなのか、ということを正しく伝えることが大切です。英語が流暢であることも必要ですが、片言の英語でも、何か伝えるものがある人の方がより重要なのです。もちろん国粋主義である必要はまったくありません。しかし、日本人としての基本的なもの、物の見方、歴史認識などをしっかりと持っているような人間であってほしいと思います。そうでなければ本当の意味での国際社会には貢献できないと思います。

 【すずき・もとゆき】1941年2月7日、東京都生まれ。63年本学工学部を卒業、68年化学工学博士号を取得。同年より本学化学工学科助手となり、その後カリフォルニア大学デービス校に博士研究員として入る。帰国後、生産技術研究所講師、助教授を経て教授(環境化学工学)に就任。95年から同研究所所長を務める。98年、国連大学副学長に就任、学術部門上級スタッフとして環境プログラムを担当する。今年3月、本学を定年退官。



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国連大学副学長
 鈴木 基之 教授

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 専務理事
 黒田 瑞夫 氏

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 所長
 高島 肇久 氏

NGO活動推進センター
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財団法人オイスカ
 事務局次長
 亀山 近幸 氏

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