東大新報

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「20世紀の優秀な指導者“鄧小平”」

久留実 (中国留学生)

２０世紀優秀な指導者――トウ小平氏

　北京時間二十五日十時二十五分、全てのテレビ局、ほとんどのラジオ局では鄧小平氏追悼会の生中継が放送されている。江沢民出席の追悼詞を読む声が響いてくる。今日は、中国全土、すべての「娯楽活動」が禁止され、ほとんどの学校や会社など仕事を止め、追悼会の生中継の観看を組織した。「哀曲」は何十回もながれ、このような状況は、毛沢東氏の追悼会（一九七六）以来である。世界中で、中国人しか味えないことになるであろう。（以上中国筋より）

　一九九七年二月十九日、中国の鄧小平氏が死去。鄧小平氏はなぜ現代中国人に尊敬されるのか？　鄧小平氏は指導者として、どこが優れているのか？　どのような功績をあげたのか？

一、「実是求是」の作風

　「実是求是」というのは、事実に基づき、ことを評価することである。

　例えば、毛沢東氏に対して、「毛沢東なくして新中国なし。これはいささかも誇張ではない」（78年・12　党中央工作会議で）。「毛主席は文革期に小さくない過ちを犯し、党と国家と人民に多くの不幸をも

たらした」（80年・３　イタリア人記者のインタビューで）。このように毛沢東氏の功過を評価したのである。

　当時、毛沢東氏の過失を指摘するのは初めてであった。毛氏が「七分の功、三分の過」というのは同氏が書いた公式定論になった。

二、実績主義と開拓主義

　鄧小平氏の有名な二大理論に「猫論」・「摸論」がある。「猫論」とは、一九六二年中央書記処会議で、「今の問題は食糧問題で、食糧をつくれば、個人企業もいいのだ。白猫にしろ、黒猫にしろ、鼠を取ればいい猫なのだ」という実績、事実主義である。そのため、六六年の失脚に至った。

　「摸論」とは、「石を摸って、川を渡る」という未知領域を主体的に開拓する精神である。その精神を基に、「改革開放」や「一国二制」など多くの実績をあげてきた。

三、「改革開放」

　改革開放は鄧小平氏の代表的な実績である。八〇年代まで、中国は西側の思想の侵入を恐れ、鎖国政策をとっていた。七七年鄧氏三回目の復活によって、七九年に「四項基本原則」（マルクス・レーニン・毛沢東思想、社会主義、中国共産党、人民民主政策）を提出し、そのもとで八〇年から改革を進めた。翌年六月に中共中央軍委主席に当選し、確実に実権を握るようになった。八五年まで深（土川）、珠海など南に経済特別区を作り、資本主義の経営方式を採り入れ、中国大陸では初めての、現代化都市が現れた。

四、「一国二制」

　香港、マカオ、台湾問題については、「一国二制」という提案を出した。一つの国で、共産主義（社会主義）と資本主義、この「相反」する思想を同時に採り入れるという史上初の発想である。

　中国の主体が「四項基本原則」を従った上で、未統一の兄弟地方を資本主義体制のままで迎え入れ、祖国の統一の念願をあらわしたのだ。鄧氏が香港返還を見ることができないのは非常に残念であるが、香港がこのまま安定して返還されるなら、同氏の功績といっても過言ではないだろう。

五、幹部終身制の排除

　中国では、封建的な官僚制度がかなり深く根づいている。歴代の指導者は誰もが死ぬまで一線を勤めていた。毛沢東氏にしても、周恩来氏にしても、最後まで要職を占めていたのである。

　九〇年、鄧小平氏はすべての職を辞退し、一人の「庶民」になった。事実上では、ある程度鄧氏を通して政治を動かしていたようだが、中央幹部の退職が中国史上初というのも事実なのである。

六、上海開発

　鄧小平氏の生涯で、最後に力を入れたのは上海開発である。鄧氏が退職する直前、江沢民や朱（金容）基など上海出身の地方幹部を中央政府に人事させ、上海開発を交代した。鄧氏は、「経済特別区は加工工業地区であり、爆発力があるが、根がない。他地区を刺激するためにたてたのだ。上海などは、中国の伝統工業地区で、中国の全体発展の中心にならなければならない」と言う。八八年から、鄧氏が七年連続自ら上海考察を行ない、上海の浦東地方の開発を指導した。

　鄧氏が最後に公衆の前に顔を出したのも一九九四年の春節、上海であった。上海の発展が中国の発展を導くことができたとすれば、それこそ、鄧氏の生涯、最大の功績になるであろう。

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久 留実 (中国留学生)

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久留実 (中国留学生)