998号(2007年2月25日号)

1面主要記事

■人間の未来考える

  サステイナビリティ学シンポ

 サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)、日本経済新聞社、国際研究型大学連合(IARU)が共催する公開シンポジウム「資源と環境が支える地球と人間の未来」が3日、本学安田講堂で行われた。シンポジウムには1000名を超える参加者があり、立ち見が出るほどの盛況ぶりだった。

 サステイナビリティとは持続可能性という意味で、「サステイナビリティ学」は国際社会が抱える緊急の課題を解決し、地球社会を持続可能なものへと導く学術をいう。サステイナビリティ学連携研究機構は、本学、京都大学、大阪大学、北海道大学、茨城大学に研究拠点を形成し、サステイナビリティ学を発展させることを目指している。
 シンポジウムの最初に、本学の小宮山宏総長が「サステイナビリティ学の世界的研究拠点を目指して」と題してあいさつした。小宮山総長は、20世紀は知識が爆発し、学問領域が細分化され全体像が把握できなくなってきていると指摘。温暖化、エネルギー枯渇、民族対立など人類が直面している課題を解決し、サステイナビリティを実現するには、学問の全体像が把握できるように構造化する必要があると訴えた。
 総長のあいさつの後、トヨタ自動車取締役相談役の奥田碩氏、元環境大臣の川口順子参議院議員、イエール大学のゲリー・ブルーワー教授が基調講演を行った。奥田氏は、中国やインドではモータリゼーションが加速しており、環境・資源エネルギーの被害は莫大になっていると語った。また奥田氏はハイブリッドカーの開発といったトヨタの取り組みを紹介し、技術革新の必要性を強調した。
 続くパネル討論では、東洋大学の松尾友矩学長ら五名のパネリストが「資源・エネルギーから考える持続可能な未来社会」というテーマで議論した。(4面に講演要旨)


■染料で蛍光材料

  構造工夫し発光率高める
  理学系研究科・川島教授

 本学大学院理学系研究科の川島隆幸教授らは、染料として知られる物質「アゾベンゼン」に光を当てて効率よく蛍光を発生させることに成功した。6日までに、英王立化学会誌ケミカル・コミュニケーションズの電子版に発表した。
 アゾベンゼンは、染料として一般的なアゾ染料の一種で、光を当てると異性化と呼ばれる構造変化を容易に起こす特徴がある。川島教授らはこの異性化という現象に着目し、異性化に使われるエネルギーを光として放射できるようにアゾベンゼンの構造を工夫した。
 アゾベンゼンのベンゼン環にホウ素を結合させて窒素とホウ素が近くに位置し、強く相互作用するように分子を設計した。その結果、合成したホウ素置換アゾベンゼンに光を当てると波長503ナノ(ナノは10億分の1)メートルの緑の蛍光色を出すことが分かった。
 このアゾベンゼンの発光効率は76%で、これまでのアゾベンゼンに比べ3万倍も効率よく蛍光を示すという。理論的には効率を100%にすることも可能とみて改良を重ねる。
 今後、発光効率の向上と蛍光波長の調節を図り、多彩な蛍光色調の蛍光性アゾベンゼンが開発できれば、夜間に工事関係者らが交通事故防止のため着用する反射材付きの作業服を「夜光服」にしたり、携帯電話の画面に使われる有機発光ダイオードに応用したりできるという。


■免疫細胞治療技術推進へ

  メディネットとサービス開始
  東大病院

 本学医学部附属病院(東大病院)は6日、メディネットと免疫細胞療法総合支援サービス契約を締結し、東大病院の22世紀医療センター内に開設された「免疫細胞治療学講座(免疫細胞治療部門)」に対する同支援サービスが開始された。  免疫細胞治療学講座(免疫細胞治療部門)は、メディネットが企画設計、設置した最先端の細胞加工施設を併設する外来診療セクション、研究開発セクションから構成されている。
 同部門は、この機能を有効に活用し、学内の各診療科や研究部門をはじめ、外部研究機関などとも積極的な連携を図り、各種がん疾患を対象とした最新の免疫細胞治療技術につき、基礎研究および臨床開発を推進する。有効性、安全性が確認された治療技術については、順次実地医療として臨床応用を開始する計画だ。
 今回の契約締結に基づいて実現する同講座の本格的な取り組みは、免疫細胞療法を、今後普及される医療として確立するための大きな推進力となることが期待される。

免疫細胞療法総合支援サービス

免疫細胞療法を安全かつ効率的に実施するために必要な技術・ノウハウ、施設・設備、資材、専門技術者、情報システム等を、医療機関に対して包括的に提供するサービス。



■八重樫被告らを停職処分

  東大病院・入札妨害問題

 本学医学部附属病院の空調設備保全業務を巡る入札情報漏えい事件で、本学は8日、競売入札妨害罪で起訴された同病院事務部管理課係長八重樫博被告(44)と同課技術職員枩本一祐被告(30)を停職2カ月とする処分を発表した。
 また、同課の副課長を停職1カ月、同課長を減給、事務部長を戒告とした。
 本学の調査委員会の調べに、八重樫被告らは不正入札の事実を認めているという。私的な利益を得るためとは認定できなかったとして解雇処分にはしないものの、解雇に次いで重い停職2カ月が相当とした。
 両被告は2004年3月と昨年3月に空調設備保全業務の入札を実施した際、予定価格の概数を業者に漏らすなどした。
 本学の上杉道世理事は「今後、再発防止に向けて規律保持の一層の強化・徹底に努めるとともに、現行の入札契約のあり方の改善を図って参る所存であります」とコメントした。



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 他国への無関心 克服すべき
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  第903号(2003年11月15日号)

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  第878号(2002年12月25日号)

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  第850号(1月15日号)

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