1094号(2010年10月25日号)

1面主要記事

暗黒物質検出器が完成

  本学宇宙線研究所ほか

 2007年から建設が始まったXMASS実験装置が10月に完成した。来春より、同装置を用いた本格的な観測が開始される。

 XMASS実験は、本学宇宙線研究所、本学数物連携宇宙研究機構、岐阜大学、神戸大学、佐賀大学、東海大学、名古屋大学、宮城教育大学、横浜国立大学、早稲田大学、韓国標準科学研究院、セジョン大学、ソウル国立大学等による共同研究で、暗黒物質(ダークマター)を直接観測することを目的としている。宇宙には、原子や分子といった現在知られている物質の五から六倍もの暗黒物質が存在していることが近年分かってきた。しかし、この暗黒物質は光を発せず、(現在知られている)物質とほとんど反応しないため、その正体は謎に包まれたままとなっている。暗黒物質は宇宙の形成において重要な役割を果たしたと考えられており、暗黒物質を研究することは、現在の宇宙の様子を明らかにするだけでなく、宇宙の起源を解明することにもつながる。

 暗黒物質は遠い宇宙に存在するだけでなく、わたしたちの周りでも飛び回っていると考えられる。物質にほとんど作用しないため、検出するのはきわめて難しいが、高感度の検出器を用いれば、観測することが可能だという。

 XMASS実験装置は、液体キセノンにより暗黒物質を観測する装置。暗黒物質が液体キセノンに衝突すると、微弱な光を発生する。その光を球体の内壁に並べた、642本の光検出器で捉える。しかし、この光は非常に弱いため、暗黒物質以外の物質の影響により観測結果が揺らいでしまうおそれがある。そのため、XMASS実験装置にはこうしたノイズを防ぐための様々な工夫がなされている。宇宙線の影響を低減するために検出器が地下に設置されているだけでなく、地下の岩盤等から来る放射線を除去するため直径10m、高さ10mの水槽の中心に置かれている。また、検出器の素材や使用する液体キセノンについても、観測に影響を与えかねない不純物が徹底的に除去されている。その結果、既存の暗黒物質検出器と比べ50倍の感度を持つ世界最高感度の検出器が完成することとなった。

 来春から始まる実験により、世界初の暗黒物質の直接観測がなされることが大きく期待されている。


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