841号(2001年10月5日号)

1面主要記事

■乳歯から鉛を検出

病気の早期発見・治療に道
新領域創成科学研究科 吉永助教授ら

 本学大学院新領域創成科学研究科の吉永淳助教授らと横河アナリティカルシステムズは、胎児期に有害な化学物質にどれだけさらされたかを評価する手法を開発した。乳歯のエナメル質が含む化学物質だけを測定するもので、実際に神経毒性を持つ鉛の検出に成功した。胎児期に化学物質にさらされると、その後の成長過程で障害を起こす可能性があるため、今回の研究成果は病気の早期発見・治療に役立ちそうだ。

 胎児期は一般的に化学物質などの影響を受けやすく、化学物質の種類、さらされるタイミングなどにより、軽い行動傷害、先天異常、胎児死亡を引き起こす場合がある。一見、正常に生まれた子供でも、乳幼児、学童、思春期になって初めて胎児期に受けた化学物質の影響が現れるケースもあるという。
 だが、例えば学童期になって現れた影響と胎児期の暴露を結び付けて分析することはこれまで不可能だった。
 そこで吉永助教授らは胎児期の鉛の暴露レベルを評価するため、乳歯エナメル質の分析を試みた。鉛は学童期に起きる発達障害との関連性が疑われている。乳歯切歯(前歯)のエナメル質は胎生4カ月ぐらいから形成が始まり、生後1カ月ぐらいで止まる。形成後は血流が途絶えるため、エナメル質はこの間に受けた化学物質だけを記録しているという。
 エナメル質が含む鉛の濃度を測定できれば、神経系の発達途上にある胎児期の鉛暴露レベルを推定可能だ。乳歯は学童期に生え替わるため、苦痛を与えることなく採取できる。
 ただ、乳歯切歯のエナメル質は300マイクロメートル程度の極薄い層に過ぎない。このため10マイクロメートル程度の位置分解能と高い感度を持つ、同社の「レーザーアブレーションICP質量分析システム」を用い実験した。これはレーザーを100マイクロメートルに集光・照射し、そのエネルギーによって試料表面から飛び出したエナメル質微粒子をイオン化、鉛を検出する仕組み。
 鉛濃度があらかじめ分かっている動物骨粉末のペレットを試料に、繰り返し実験したところ、乳歯1グラム当たり1マイクログラムの濃度レベルの鉛は容易に検出できる感度があり、エナメル質だけ分析可能な位置分解能を備えていることが確認できた。


■シーボルト展開催

オランダから約300点が寄贈

 9月26日から10月26日にかけて、本学駒場の教養学部美術博物館で「シーボルトと日本の植物」と題した特別展示が行われている。これは9月26日より植物学会が行われたのにあわせて開催されたもの。
 シーボルト展では総合研究博物館に保管されているシーボルト日本植物コレクションの標本のうち、彼自身によってあるいは彼の後継者らによって採集されたアジサイ、サザンカ、クリ、シソ、ダイズなど50点あまりが、彼の肖像画や、彼が日本人の絵師川原慶賀に描かせた、生きた植物の写生画などの関連資料とともに展示されている。また、シーボルトに師事して植物分類学を学び、標本を作成するなどして日本で最初の植物学者となり、後に本学教授となった伊藤圭介氏(1803〜1901)による採集標本なども展示されており、日本の植物研究におけるシーボルトの功績や、江戸時代に国外で行われていた日本の植物についての研究の一端を知ることができるようになっている。
 170年あまり前、オランダ商館付きの医師として来日したシーボルトの日本植物研究は、オランダが国家としてその活動を援助し、標本・資料の収集も国家の方針に基づいて組織的に行われており、収集された標本の大部分はオランダ国立植物学博物館ライデン大学分館に保管されている。本学総合研究博物館所蔵の標本は、昨年オランダと日本の修好400年を記念して、ライデン大学分館に保管されているもののうち約300点が寄贈されたもので、その一部はすでに昨年10月26日から12月22日にかけて、総合研究博物館で一般公開が行われた。これらの標本は、植物学の研究資料としてのみならず、シーボルト自身によって採集された標本を含むという文化史的な意義、また、日本に保管される最古の植物標本という科学史的な意義をも有しているといわれる。古い資料のため、展示期間は1カ月間のみ。開館は水、木、金曜の10時から16時までとなっている。
 教養学部美術博物館は、戦後本学が新制大学として再発足するときに、学際的な研究分野に目をむけた教養学部という新学部の設立にあたり不可欠の施設として、初代教養学部である長故矢内原忠雄氏が設置を構想したもの。大学所属の美術館ではあるが一般公開を原則としており、誰でも自由に閲覧できるようになっている。


■伊豆戸田マラソン・28日に開催

 本学運動会主催

 本学運動会主催の第26回伊豆・戸田マラソンレースが28日に開催される。伊豆・戸田マラソンレースは、本学戸田寮をスタート・ゴールとするフルマラソンで、本学学生、教職員、卒業生であれば誰でも参加できる。個人・チームのいずれでも参加可能で、受付は9月26日より行われている。



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